[こんな時は救急外来へ!!症例別Q&A]
鎖骨骨折について
鎖骨とはどのような骨ですか?どんな役割がありますか?
鎖骨は、真上から見るとS字型をした骨で、太さも均一ではなく中央部から外側にかけて丸から三角形へと変化します。
内側の端は胸骨とつながり、外側の端は肩甲骨とつながりそれぞれ関節を構成しています。
つまり、鎖骨は、腕、肩、胸、背骨をつなぎ合わせ、その動きを連結し、助けているという重要な役割があります。私たちが腕を自由に動かすことができるのは鎖骨のおかげです。さらに首付近にある神経や血管などの循環器系も守る役割もあります。
鎖骨骨折とはどのような骨折ですか?
鎖骨骨折は、全骨折中約10%を占めるほど多い骨折のひとつです。
原因は転倒して肩や腕を強打した衝撃で生じることがあります。他にもラグビーやアメリカンフットボール、柔道などの激しいコンタクトスポーツがきっかけとなることもあります。鎖骨骨折を起こしやすい要因のひとつに交通事故もあります。折れる瞬間にボキッ!という音を聞く人も多いようです。
鎖骨骨折の症状にはどのようなものがありますか?
鎖骨骨折は、骨が折れた部位に痛みや腫れが生じます。
特に鎖骨骨折で生じる痛みは捻挫や脱臼よりも強いため、肩を上げられないことも多いです。また鎖骨が折れて正常の位置からずれたことにより、その部分の皮膚が突出して見えることもあります。数日経過してから、患部や周辺にあざができることもあります。さらに鎖骨骨折そのものや原因となった外力により、近くを通る神経が損傷して、手にしびれや痛みが生じることもあります。骨折した部位や骨のずれ方などによっては、骨の付きが悪くなるともいわれています。
鎖骨骨折に合併する損傷とは?
激しい衝撃を受けた場合、骨折部位が血管や神経あるいは肺に損傷を与えることがあります。また骨がゆがんでくっついてしまう変形治癒や骨折した骨同士がくっつかず不安定になってしまう偽関節、痛みをともなう関節症があります。
鎖骨骨折の治療はどのように行いますか?
治療は保存療法と手術療法があります。
治療方針は、骨のずれ具合、皮膚から骨が飛び出ているかなどを考慮して決定します。
比較的軽度で保存療法による治療が期待できる場合、骨のずれを正常な位置に直してから鎖骨バンド(クラビクルバンド)などで患部を固定して安静を保つようにします。
痛みが強ければ鎮痛薬を処方することもあります。
骨折による骨のずれが激しい、皮膚から骨が飛び出ているなど重症の場合には、プレートやワイヤーなどを使用して骨折した箇所を結合させる手術を行うことになります。
一方で鎖骨の外側3分の1で骨折している鎖骨遠位端骨折の場合は保存加療では骨がつきにくいことも多く、手術的加療が選択されることが多いです。
近年では早期社会復帰を目指し手術を行うケースが増えています。手術をしてもしなくても骨がつくまでには最低4~12週を要しますが、鎖骨骨折の治療期間中は全く腕を動かしてはいけないというわけでなく、無理のない範囲で日常動作など適度な動作は行うようにします。
鎖骨骨折後の経過について教えて下さい
東大阪病院では、受傷から早期手術を心がけています。
入院後合併症がなければ、入院翌日の手術になります。術後問題なければ、翌日、または翌々日に退院となり、平均して2泊3日~3泊4日が入院期間となります。
(※上記入院期間は一般的なケースとなり、骨折の具合によって変動いたします。)
鎖骨骨折の手術について教えて下さい
保存的な場合(手術をしなかった場合)骨折部が動くので痛みを伴い肩を動かすことは難しくなります。
手術を行えば、積極的なリハビリができるので社会復帰にかかる時間を短くできます。
鎖骨骨折術後の生活での注意点はありますか?
術後早期に重いものを持たない、担がないように努めてもらいます。
鎖骨骨折の固定期間中のお風呂はどのようにするのですか?
服や下着の着替えやお風呂の際は、鎖骨固定帯(クラビクルバンド)を外す必要があります。医師の指示に従って、骨折した方の手に負担がかからないようにしましょう。
腕を90度以上に持ち上げたり、骨折している方の手で体を支えたりすることは避けましょう。
服の着替えは、服を着る時は、前開きの服が着脱しやすいでしょう。
骨折している方→していない方の順に着ます。脱ぐときはこの逆となります。
お風呂でも、骨折していない方の手で動作を行うようにしましょう。片手で洗いにくい背中などは、ご家族に手伝ってもらうか、長柄ブラシを使うとよいと思います。長柄ブラシは100円均一ショップでも購入できます。
鎖骨骨折のリハビリテーションとしては何を行いますか?
肩関節の拘縮予防・可動域訓練を行います。
拘縮(こうしゅく)とは、関節が正常な範囲で動かなくなってしまう状態の事で、日常の動作に支障をきたします。
肩を動かし、肩関節が硬くならないように動かしていく可動域訓練を通して、肩関節の拘縮を予防します。
鎖骨骨折はどれくらいで治りますか?
一般的に、骨癒合(骨がくっつくこと)ができるのは2~3か月です。
骨癒合が終了してギプスが外れたら本格的なリハビリテーションが始まります。
(※上記期間は一般的なケースとなり、骨折の具合によって変動いたします。)