私は、回復期リハビリテーション病棟に従事している理学療法士です。
今回は、数ヶ月前まで当院回復期リハビリテーション病棟に入院されていた患者さんの、その後の話を紹介したいと思います。
当院の回復期リハビリテーション病棟(60床)には、主に院内の急性期病棟で股関節や膝関節などの整形手術をされたのち、回復期リハビリテーション病棟に転床されてくる整形外科患者さん、他院で当院と同様に股関節や膝関節の手術をされリハビリ目的の整形外科患者さん、他院で腰椎や頸椎の手術をされリハビリ目的で転入されてくる整形外科患者さん、そして、脳卒中などを発症し、脳神経外科のある急性期病院からリハビリ目的で転入されてくる脳血管疾患の患者さんがおられます。
最近は、当院でも若い脳血管疾患患者さんが増えてきています。
若い方は、元々の身体機能が高い方が多く、自宅に退院される方が多いです。
2ヶ月ほど前にも私の担当していた患者さんが無事にご自宅に退院されました。
今回、その患者さんが、当院を来院することになりました。
来院することになった理由は、身体障害者手帳を作成するにあったっての身体機能の計測が目的でした。
身体障害者手帳は、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付される手帳です。
原則、更新はありませんが、障害の状態が軽減されるなどの変化が予想される場合には、手帳の交付から一定期間を置いた後、再認定を実施することがあります。
身体障害者手帳制度は、身体障害者福祉法に基づき、都道府県、指定都市又は中核市において障害の認定や交付の事務が行われています。
身体障害者手帳の交付申請は、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が指定する医師の診断書・意見書、身体に障害のある方の写真を用意し、お近くの福祉事務所又は市役所にて行います。(厚労省のホームページより引用)
私的には、この患者さんが回復期リハビリテーション病棟を退院後、どのような生活を送られ、どのように身体機能が変化しているのかなど、気になっていました。
病院勤務のリハビリ療法士あるあるですが、患者さんが退院後、改めてお会いする機会はほぼありません。そのため、再会するのがとても楽しみでした。その反面、心配でもありました。
なぜ、心配していたかというと、
回復期リハビリテーション病棟を退院後の患者さんのADLは、退院後1〜3ヶ月で入院時に比較し、低下すると言われているからです。
(参考文献:回復期リハビリテーション病棟患者の退院後日常生活活動変化の特徴と関連因子 理学療法科学 23(4):495–499,2008)
そこで、私たちは、退院後もご自宅でリハビリテーションを続けることができる訪問リハビリテーションをお勧めしています。訪問リハビリテーションでは、専門家がご自宅に伺い、ADLの維持・向上をサポートさせていただきます。ADLの維持・向上だけでなく、ご家族への介護指導も行っています。
訪問リハビリテーションを利用することで、ADLの低下を予防し、より長くご自宅で快適な生活を送ることができるようになります。
もちろん、この患者さんにも退院後の訪問リハビリテーションを提案させていただいていました。
患者さんに訪問リハビリテーションをご提案・ご紹介するのは、サービス担当者会議の場が多いです。
サービス担当者会議では、患者さんの身体状況や家屋評価の報告(家屋評価時に撮影した写真なども見ながら)などを行います。
加えて、医療・介護関係者間で、書面での申し送り(リハビリサマリー)なども行います。
また、状況によっては、事前に、ご家族に電話をしてある程度話をさせていただいたり、患者さんやご家族にリハビリ見学を行なっていただくなどの工夫をさせていただいています。
この会議で最も大切にしていることは、
患者さんとご家族が、患者さんの現状を理解していただき、退院後の生活で生じるであろう課題(例えば、自宅での移動や入浴、服薬管理など)を把握していただき、その課題解決の方法を私たち(医師、看護師、リハビリ療法士など)が図やイラスト、動画などを活用しながら分かりやすく説明し、その場にいる全員が納得し、共通認識をもつことです。共通認識を持つことで、退院後の生活を安心して送ることができるだけでなく、予期せぬ問題が発生した場合にも、関係者間でスムーズに対応することができます。
サービス担当者会議とは、患者さんのケアプラン(介護サービス計画)を作成する際に、関係者が集まって話し合い、より適切なサービス提供を目指すための会議です。
【目 的】
・患者さんの状況や希望を共有し、適切なケアプランを作成するため
・サービス担当者間で連携を取り、より質の高いサービスを提供するため
・ケアプランの実施状況や課題を共有し、改善策を検討するため
【参加者】
・ケアマネジャー(介護支援専門員)
・患者さん
・患者さんのご家族
・サービス担当者(主治医、介護士、看護師、リハビリ療法士など)
・その他、必要に応じて関係者(福祉用具専門相談員など)
【内 容】
・患者さんの心身の状態や生活状況の把握
・患者さんの希望や目標の確認
・ケアプランの内容の検討
・サービス担当者間の役割分担や連携方法の確認
・その他、サービス提供に関する情報共有や課題解決
【サービス担当者会議の重要性】
サービス担当者会議は、患者さんにとって適切なサービスを提供するために非常に重要な機会です。様々な専門職の意見を交換することで、より質の高いケアプランを作成し、患者さんの生活を支援することができます。
当法人にも東大阪病院附属クリニックからの訪問リハビリテーションサービスがあります。
当法人の訪問リハビリテーション課では、患者さんが入院中に行われる月一回の他職種カンファレンスに、訪問リハビリテーション課のリハビリ療法士が参加する取り組みを行っています。
目的は、在宅部門(訪問リハビリテーション課のリハビリ療法士)からの視点で意見やアドバイス、情報を発信し、他職種と共有するためです。
このカンファレンスでは、患者さんの当法人訪問リハビリテーションサービスの利用の有無は問わずに、訪問リハビリテーション課のリハビリ療法士=在宅のプロしての意見や情報をもらいます。
病院のスタッフだけでは見落とされがちな在宅目線や在宅に関係する各種サービスについての情報提供があります。
当法人の訪問リハビリテーションサービスを利用する方には、入院中にリハビリ見学などを行い、退院後に実施する評価や機能訓練、退院後に予測される課題などを事前に共有し、よりシームレスなリハビリテーションを提供できるように工夫しています。
さらに、同法人の訪問リハビリ療法士が、定期的に院内に顔を出してくれるため、退院後の患者さんの状態を知ることも可能です。患者さんの状態によっては、私たち病院(院内)リハビリ療法士の臨床の振り返りをする機会にもなります。
さて、そんな心配もしていた患者さんですが、患者さんが来院される数週間前に、ある学会で、当法人の訪問リハビリテーション課の担当リハビリ療法士に会えたので、患者さんの状況を知ることができました。
その時の担当リハビリ療法士の話では、患者さんは生活リズムも含め、疼痛を伴うような活動制限が生じているとのことでした。そのため、再度、私から院内で行なっていたリハビリ内容や提案していた自主トレーニングについて話をさせていただきました。
それから2,3週間過ぎた頃に患者さんは来院されました。その際は、私の懸念事項が吹き飛ばせる程、身体機能は保持できていて、安心しました。
元々、屋外への活動範囲の拡大も希望されていた患者さんでしたので、ご自身でも頑張られていたのだと思います。
退院後の適切なサービスの提案はリハビリテーションを実施する視点からは必要な事ですが、それ以上に、患者さん自身のモチベーションが退院後の身体機能に大きく影響するのではないかと感じたケースでした。
私は、理学療法士として患者さんやそのご家族にリハビリテーションの提供や介助方法の指導を行うことは多々あります。しかし、これは患者さん自身のADL、QOLを向上させるためのきっかけに過ぎないと考えています。
このきっかけを如何に患者さん自身が“モノ”にできるかは、各リハビリ療法士の患者さんとの関わり方の工夫次第なのかなと思います。
退院後も「リハビリテーションをして良かった」と思っていただけるような関わりを心がけていきたいと思います。
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社会医療法人有隣会 東大阪病院
リハビリテーション部
・急性期リハビリテーション課
・緩和ケアリハビリテーション課
・回復期リハビリテーション課
文責:回復期リハビリテーション課 理学療法士 O
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TOYOTAが開発した最先端のロボット機器 ウェルウォーク(WW-2000)を導入しました。
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