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リハビリテーションの業務負担軽減にむけて 〜“ルール追加”より“場を変える”で効率化〜
2025-10-28【カテゴリー】PTの仕事/OTの仕事/STの仕事/ワークライフバランス/その他

 私たち療法士(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の仕事は、患者さんへの直接的な「診療業務」だけでなく、多岐にわたる付随業務が多いのが実情です。

 例えば、より質の高いケアを行うためには、介入前にカルテからの情報収集や、医師・看護師といった他職種との密な情報共有が不可欠です。また、日々のカルテ記載やリハビリテーション実施計画書の作成などの重要な事務作業も発生します。

 これら一つひとつは、患者さんへの急性期リハビリを安全かつ的確に進めるために欠かせない業務ですが、作業量が増え、業務効率が悪い環境では、現場の負担が増大し、本来注力すべき診療業務の質を維持できなくなるという悪循環に陥るリスクがあります。

 この課題を解決するため、当院 急性期リハビリ課では、「診療業務の不備を無くすための環境改善」をテーマに、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の各ミーティングで意見交換を行いました。

 実際に業務に携わる職員が、現在の作業環境をどう感じているのかを知る。この中で、言語聴覚士(ST)ミーティングから「そもそも今のスタッフルームは本当に作業しやすい環境なのか?」という本質的な問いが上がりました。

 当院では、急性期と回復期のスタッフ合わせて約90名が在籍しています。移転から2年が経過し、スタッフルームは物が増え、気づけば作業スペースが圧迫されているという現状がありました。

 議論の結果、「新しいルールを増やすのではなく、まずは物理的なスタッフルームの環境を整えてみよう」という意見に集約されました。これは、このまま放置すれば、業務負担が増え続ける悪循環を断ち切りたいという現場の強い思いが込められたものです。

 この意見に賛同した言語聴覚士メンバーを中心に、まずはスタッフルームの現状把握と環境整備の取り組みを始めることになりました。

課題の洗い出し:スタッフルームで起きていた“ミクロなムダ”

現場観察とヒアリングから、以下の課題が繰り返し確認されました。

物が増加して必要な様式や備品を探す時間が発生  

 

導線が狭いため、すれ違い・行き違いによる中断が頻発

 

作業スペースが不足し、立ち作業と座り作業が混在して中断が増える

 

これらは書類作成の不備や探す時間のロスを誘発し、結果的に全体の流れを滞らせていました。

改善の基本方針:「探さない」「交差しない」「途中で止まらない」

ミーティングから出た提案は、“ルールを増やす”ではなく“環境を整える”というもの。
これを軸に、書類業務の動線を短く・まっすぐにするためのレイアウト最適化に着手しました

実行プロセス:現場合意→設計→検証の8ステップ

改善は以下の8ステップで実行。現在は⑦(レイアウト変更の実施)まで完了しています。

リハ部合同会議で提案し承認を得る

急性期・回復期の各ミーティングで周知

賛同・協力スタッフの募集

話し合い(レイアウト案作成)

各ミーティングで案を提示

実施可否を問うアンケート

レイアウト変更を実施

⑧実施後アンケートで評価(実施予定)

この段階設計により、急ぎすぎて現場が混乱するのを避けながら、現場の合意形成と巻き込みを同時に進めています。

レイアウトの要点(Before→After)

Before(課題の状態)

 ・書類・備品の散在で「探す時間」が積み重なる

 ・狭い導線で人・物が交差し、声かけや回り道が増える

 ・立ち作業と座り作業の混在で“途中中断”が常態化

After(実装した施策)

書類関連の“集約ゾーン化”:書類定位置化し、ワンストップで出し入れできる棚を整備

 

メイン導線の拡幅:立ち止まりを最小に

 

作業の分離:立ち作業の仮置き台と集中して座る席を分け、中断を起こしにくい配置に変更

この3本柱(まとめる/広げる/分ける)が、“探さない”“交差しない”“途中で止まらない”を実現するポイントです。

暫定結果と今後の検証

 レイアウト変更(⑦)まで完了したことで、書類関連の探索時間が減少、通路での立ち止まりが減少、作業の腰折れが減少といった定性的な変化が生まれています。

 次段階では実施後アンケート(⑧)でスタッフの体感と改善余地を可視化し、定量指標で検証します。「効率よく業務ができる状態」を維持・拡張するため、改善の継続運用に努めていきます。

 多くの職員が働く環境において、ルールは不可欠なものです。しかし、それらのルールを管理職だけで決めてしまうと、「実際に現場で働くみんなの意見が反映されているのか」という疑問が残ります。日々の業務における疑問の解決や、より働きやすい環境へと変化していくためには、今回のミーティングのように、職員全員で検討する場が重要であると改めて感じています。

 今回の取り組みのように、現場の職員から上がった意見に対して、組織として順を追って真摯に取り組むことが、真の業務改善となり、職員の「働きやすさ」に直結するのではないでしょうか。

 私たちは、職員一人ひとりが「この病院で長く働き続けたい」と感じられるような職場環境を目指しています。そのために、今回のスタッフルーム改善のような、現場主導の積極的な取り組みを今後も継続していきたいと考えています。

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社会医療法人有隣会 東大阪病院

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 ・急性期リハビリテーション課
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