東大阪病院 急性期リハビリテーションでの作業療法の仕事
当院急性期でのリハビリテーションの主な対象者は、骨折などの整形外科疾患、肺炎や脱水症、腎不全、がんなどの内科系疾患で入院加療とリハビリテーションが必要になられた方です。加えて、緩和ケア病棟に入院されている方、整形疾患での外来通院が必要な方です。
特に最近では、東大阪病院は年間3,500件以上の救急患者さんを受け入れるようになり、急性発症後の患者さんにかかわることが多くなっています。また、がんの患者さんへのかかわりにも力を入れています。
リハビリテーションは入院直後から処方されます。カンファレンスでは、多職種が集まり、患者さんの退院に向けてのプランを話し合います。在院日数の短縮化もあり、入院すぐに行われるカンファレンスで予後予測や在宅復帰の支援まで多岐にわたる内容について検討します。当院の場合は、看護師さんが情報収集にも協力してくださってとても助かっています。
医師が、痛みや発生する症状への対処、そして全身状態の管理を行う中で治療を行っていきますので、整形外科の手術法やその後療法に関する知識、各種内科疾患の治療の知識、薬について、カルテから先生の考えや治療状況を読み取ることなどなど…、あらゆる知識が必要になってきます。実際の訓練場面では、点滴やモニターなどの様々な機器がある中で、必要な動作の獲得を目指したり、環境を整えて認知機能の混乱を最小限に抑えたりと専門的な技術が求められます。
作業療法士がかかわる意味
作業療法士(OT)は、生活の大切なルーティーンが崩れること・脅かされることが、人の人生にどんな影響があるのかを学んでいる職種です。生活動作の支援に加え、崩れた生活を取り戻すことや再構築する必要性を知っている人が治療に関わるチームにいることに意味があるのではないかと思っています。また、その対象者の大切にしていることを見極めることが得意な職種でもあり、その大切にしていることや意欲につながるような支援を行いやすくできることにも意味があると思います。
入院生活は、患者さんにとって大きな身体的・精神的混乱の中での生活であることが多いです。骨折や病気によって、体の自由が制限されて、苦痛が生じる上に、今まで行っていた生活でのルーティーンを大きく変化させられる体験といえるのではないでしょうか。入院生活では相部屋のことも多く、この生活は見知らぬ人たちとの共同生活とも言えます。食事や入浴なども、自宅での生活とは大きく異なることが多いです。多くの患者さんにとって、トイレや食事といった今までなんなく自分で自由にできていた事の多くを、看護師に依頼して手伝ってもらわなくてはいけなくなり、頼んでいいと分かっていても精神的にも負担が生じます。残念ながら、入院生活で食事を提供する時間や入浴回数などを自宅での生活のように変更するなどできないこともありますが、作業療法士がかかわることで、患者さんの入院中の生活環境を、心身の状況に合わせてご自分でできる方向に速やかに変更でき、活動しやすい状態に整えることができます。
作業療法士は、患者さんが困難になった動作を獲得するための最短ルートを、身体や認知機能両方の観点から導くことが得意です。また、生活や人生の中で大事にしていることを把握することで、リハビリや生活への意欲を引き出したり、退院後の生活支援にあたってどの動作を優先的に獲得すべきかの順位やポイントをつかむことができます。
急性期作業療法のやりがい
急性期の作業療法のやりがいは、「骨折や疾患が患者さんの日常生活にどんな影響を与えているかを理解・分析し、それを早期に改善すること。患者さんの不安を軽減し、患者さんに自信を取り戻していただくこと。」に貢献できる点にあると思っています。
入院生活は患者さんやご家族にとって大きな不安があります。しかし、私達がかかわることで、早期に患者さんの生活環境を整え、心身の負担を軽減することができると考えています。
急性期では、まずセルフケアといわれる、食事やトイレ、整容といった動作の獲得を目指すことを患者さんご自身も希望されることが多く、生活に復帰するためには必要なことでもあるので訓練の目標として設定することが多いです。このため、「どの人にも同じようなことをしている」ように思えて、若い作業療法士の中には、ただ毎日が同じことの繰り返しで専門性や魅力が感じられなくなる方も多いように思います。
けれど、一見似たようなことであっても、患者さんお一人おひとりへの訓練のデザイン(声掛け、設定、行う手段など)は異なり、機能を獲得できた先の行いたい生活も異なっています。それがどんな生活かを見つけたり、引き出すのは作業療法士(OT)が得意とするところで、短い期間で円滑に目標を達成できた時、患者さんの思いを叶えられた時の達成感は、なにごとにも代えがたいものです。また、医師の治療に合わせて、潜在能力を予測しつつ、あうんの呼吸で機能改善を引き出し、ご本人が叶えたい日常生活動作のレベルアップをすみやかに獲得できた時は本当にうれしいです。
最近では、求職中の作業療法士や新人作業療法士が、ゆっくり患者さんと関わりたいからという理由で回復期(回復期リハビリテーション病棟)への配属を希望されることも多いです。回復期もやりがいは多いですが、急性期もやりがいがあります!今回はお伝え出来なかったですが、がんの患者さんがいらっしゃる緩和ケア、外来作業療法のやりがいもお伝えできたらと思います。
上肢と膝蓋骨骨折の患者さんで、術後は下肢全荷重可の指示が出ていました。ご高齢でしたが認知機能低下はなく、トイレは自分で行きたい希望がありました。術前は免荷指示があったので、免荷を守りお一人でトイレに行くことが出来ていました。手術翌日の午前中に作業療法を実施、麻酔の影響で嘔気がありましたが、ギャッジアップ座位から端坐位、移乗とバイタルを確認しながら練習を実施、気分不良やバイタルの変化がないことを確認し、トイレ動作もやってみましょうと行いました。片手での操作でしたが、わずかに患肢でも荷重して支えられて安全に一人で行えることが確認できました。「よかった、できたわ。ありがとう、連れてきてもらえたら一人でできそう」と言ってただけました。
医師からは動作の制限はなく、どんどんリハビリを進めてOKと指示をもらっていた方でした。
しかし、リハビリ開始2日目、生活動作の練習をしたくても、血圧が高すぎてまったく訓練ができない方がおられました。医師が血圧の薬をだしておられたのです(血圧を高めにコントロール中)が、訓練後、先生に状況報告をすると、すぐに薬の調整をしてくださり、必要な負荷の訓練が可能になって、みるみる動けるようになり数日後には退院していただくことができました。この方は、ずっと一人暮らしをされていて、なるべく人に頼らずに生活したいと願っておられた方だったので、早く元の生活に戻れて本当に良かったです。
認知機能低下のある方で、骨折・手術をされてリハビリ中でした。その場でのやり取りは可能で、記銘力※や見当識は低下しているのですが、エピソードの記憶はしっかり残っており、痛いことや嫌だった体験はしっかり覚えておられるという状況でした。多職種で情報共有し、術後は寝たり起きたりする際や、立つ動作にも痛みを伴うのですが、なるべく痛みを出さない方法を共有して介助し、嫌という活動は無理強いせず、許容できることを積み上げて関わりました。結果的には必要な動作ができるようになられ、1週間程度で車椅子への乗り移りがご自分でできるようになり、元の施設に戻ることができました。
最後に、作業療法士は回復期だけでなく、急性期でも十分にやりがいを感じることができます。
短い期間で機能訓練から環境調整、在宅復帰といかに効果的にかかわれるか?作業療法の知識はもちろんですが、医学的な知識も必要で、はじめはうまくできなくても、症例を重ねるごとにしっかり関われるようになります。やり甲斐をぜひ感じていただきたいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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社会医療法人有隣会 東大阪病院
リハビリテーション部
・急性期リハビリテーション課
・緩和ケアリハビリテーション課
・回復期リハビリテーション課
文責:リハビリテーション部門 部長 椎木
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TOYOTAが開発した最先端のロボット機器 ウェルウォーク(WW-2000)を導入しました。
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2021年12月13日
2024年8月15日改訂
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