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					便潜血陽性の原因・対処法・受診の目安を解説
【何科?どの検査?放置は危険?】					公開日:2024-12-23 / 更新日:2025-10-01
				
			
			健康診断や人間ドックの結果で「便潜血陽性」という文字を見て、ドキッとした方も多いのではないでしょうか。「もしかして、がん…?」「すぐに病院に行くべき?」「どんな検査をするんだろう…」など、次々と不安が押し寄せてくるかもしれません。
便潜血陽性という結果は、確かに消化管のどこかに出血があるサインであり、放置は禁物です。しかし、陽性だからといって必ずしも重い病気とは限りません。痔など、比較的よくある原因で陽性になることも多いのです。
この記事では、便潜血陽性という結果を正しく理解し、次に取るべき行動がわかるよう、考えられる原因や必要な検査、受診の目安などを、内視鏡医が解説します。
便潜血陽性とは?
便潜血検査は、便に肉眼では見えないほど微量な血液が混じっているかどうかを調べる検査です。この検査で「陽性」と判定された場合、消化管のどこかから出血があることを意味します。
この検査は、特に大腸がんの早期発見を目的としたスクリーニング検査として、広く行われています。
特に注意すべきサイン
便潜血陽性に加えて、以下のような症状がある場合は、より注意が必要です。速やかに医療機関を受診しましょう。
- 腹痛や腹部の張り感が続く
 - 便秘や下痢を繰り返す
 - 便が以前より細くなった
 - 理由なく体重が減少した
 - 貧血を指摘されたことがある
 
便潜血陽性で考えられる主な原因と病気
便潜血が陽性となる原因はさまざまです。ここでは、考えられる主な病気を、精密検査を急ぐべきかどうかの“受診緊急度”とともに解説します。
【受診緊急度:高】大腸がん
どんな病気?
便潜血陽性となった際に、最も見逃してはならない病気です。大腸の粘膜に発生するがんで、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。便潜血検査は、この無症状の段階でがんを発見するための重要な手がかりとなります。
受診緊急度
数週間以内
【受診緊急度:高】大腸ポリープ(腺腫など)
どんな病気?
大腸の粘膜にできるイボのようなものです。ポリープ自体は良性ですが、種類によってはがん化する可能性があります(腺腫など)。ポリープの表面から出血することで、便潜血陽性の原因となります。精密検査の際に切除することで、将来のがんを予防することにつながります。
受診緊急度
数週間以内
【受診緊急度:中】痔核(いぼ痔)・裂肛(きれ痔)
どんな病気?
便潜血陽性の原因として、実は最も多いものの一つです。排便時に硬い便によって肛門が傷ついたり、肛門周辺の血管がうっ血したりして出血します。ただし、「痔があるから陽性になったのだろう」と自己判断するのは大変危険です。
受診緊急度
経過観察(ただし、大腸がんなど他の病気がないことを確認するため、精密検査は必要)
【受診緊急度:中】炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
どんな病気?
大腸の粘膜に慢性の炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる病気です。腹痛や下痢、血便などの症状を伴うことが多く、活動期には炎症部分から出血し、便潜血が陽性となります。
受診緊急度
数週間以内
【グラフ】便潜血陽性と大腸がんの確率
便潜血陽性=大腸がんと考えてしまう方もいますが、実際にはどのくらいの確率なのでしょうか。以下のグラフは、大腸がん検診で陽性となり、精密検査を受けた人のうち、実際に大腸がんが発見された人の割合を示しています。
▼大腸がん検診(便潜血検査)で陽性となり精密検査を受けた人のうち、がんが発見された人の割合

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診」
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon_cancer.html
グラフが示すように、陽性者の中で実際に大腸がんが見つかるのは約2〜3%です。多くはがん以外の原因によるものですが、逆に言えば、陽性者のうち数十人に一人はがんが隠れている可能性があるということです。だからこそ、精密検査を受けることが非常に重要なのです。
自宅でできること(セルフケア)は?
「陽性」の結果を受け、精密検査を受けるまでの間に何かできることはないかと考える方もいるでしょう。しかし、便潜血陽性という結果に対して、ご自身でできる治療法はありません。 最も重要かつ優先すべき「自宅でできること」は、速やかに精密検査の予約を取ることです。
その上で、以下の点に注意して過ごしましょう。
一般的な対処法
結果を放置しない
何よりもまず、専門の医療機関を受診する準備をしましょう。
体調の変化を記録する
腹痛、便通の変化、体重の増減など、他の症状がないか注意深く観察し、メモしておくと診察時に役立ちます。
生活習慣の工夫
医師の指示に従う
精密検査(大腸カメラ)の前には、食事制限が必要になる場合があります。病院からの案内にしっかり従いましょう。
バランスの取れた食事
普段の食生活を見直し、食物繊維を多く含む野菜や海藻などを意識して摂ることは健康維持に有益です。ただし、自己判断で極端な食事療法を行うのは避けましょう。
市販薬などの使用について
自己判断で薬を使わない
安易に下剤や整腸剤を使用するのは控えましょう。
服用中の薬を医師に伝える
貧血の治療で鉄剤を飲んでいる場合、便が黒くなることがあります。診察の際に必ず医師に伝えてください。
何科にかかるべき?
便潜血陽性を指摘されたら、まずは消化器系の専門医がいる医療機関を受診しましょう。
- 消化器内科
 - 胃腸科
 - 大腸肛門科
 
かかりつけの内科で相談し、専門の医療機関を紹介してもらうのも良いでしょう。
Q&A:どの科を選べばいい?
A. 大腸の精密検査(大腸内視鏡検査)が受けられる**「消化器内科」や「胃腸科」**が第一の選択肢となります。お尻の症状(出血や痛み)が明らかな場合は、「肛門科」や「大腸肛門科」も適しています。
診察では何をするの?
精密検査の内容
医療機関を受診すると、まず医師による問診や診察が行われ、その後、出血の原因を特定するための精密検査が計画されます。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
なぜこの検査が必要?:便潜血の根本原因となっている出血源を、カメラで直接大腸の内部を観察して突き止めるためです。これは、確定診断のために最も重要で精度の高い検査です。ポリープが見つかった場合は、その場で切除して治療とがん予防を同時に行えるという大きなメリットもあります。
CT検査
なぜこの検査が必要?:便潜血陽性以外の症状(便秘等)があれば安全に大腸内視鏡検査を施行できるか評価する必要があります。CT検査では大きな大腸がんを発見することは可能ですが、内視鏡で切除可能な大腸ポリープを発見することは出来ません。CT検査で問題なく内視鏡が施行できると判断されれば内視鏡検査を追加する可能性もあります。
放っておいて大丈夫?受診の目安
結論から言うと、便潜血陽性の結果を放置してはいけません。 自覚症状がなくても、必ず精密検査を受ける必要があります。
このような場合は、必ず受診してください
健康診断や人間ドックで便潜血「陽性」と判定された場合
これが最も重要な受診の目安です。たとえ症状がなくても、体からの重要なサインと受け止め、必ず医療機関を受診してください。
腹痛、便通異常、体重減少などの症状を伴う場合
便潜血に加えて、お腹の不調や便が細くなる、急な体重減少など、他の気になる症状がある場合は、特に急いで専門医に相談しましょう。
大腸がんは、早期に発見し治療すれば、高い確率で治癒が期待できるがんです。その貴重なチャンスを逃さないためにも、「症状がないから」「忙しいから」と後回しにせず、ご自身の体と向き合う機会にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 便潜血が陽性だったのですが、大腸がんの可能性はどのくらいありますか?
A. 結論から言うと、陽性者のうち実際に大腸がんが見つかるのは2〜3%程度です。
理由は、陽性の原因には痔やポリープなど、がん以外のものが多いためです。しかし、確率はゼロではありません。原因を特定し、安心するためにも必ず精密検査を受けてください。
Q. 痔でも陽性になりますか?
A. はい、痔は便潜血陽性の最も一般的な原因の一つです。
しかし、「自分は痔持ちだから」と自己判断で精密検査を受けないのは非常に危険です。痔だと思っていても、実は大腸がんやポリープが隠れている可能性も否定できません。出血の原因を正確に突き止めることが重要です。
Q. 精密検査は必ず受けなければいけませんか?放置するとどうなりますか?
A. はい、必ず受ける必要があります。放置は絶対にやめてください。
もし陽性の原因が早期の大腸がんだった場合、放置するとがんが進行し、治療が難しくなったり、命に関わったりする可能性があります。早期発見・早期治療の機会を逃さないでください。
Q. 大腸内視鏡検査は痛いですか?苦しいですか?
A. 感じ方には個人差がありますが、苦痛を最小限に抑える工夫がされています。
検査への不安が強い場合は、鎮静剤(眠くなる薬)を使用して、うとうとと眠っているような状態で検査を受けることも可能です。事前に医師とよく相談し、不安な点を伝えておきましょう。
Q. 2回検査して1回だけ陽性だった場合は大丈夫ですか?
A. いいえ、大丈夫ではありません。1回でも陽性であれば精密検査が必要です。 大腸がんやポリープからの出血は、常に出血しているわけではなく、出たり止まったりを繰り返す(間欠的)ことがあります。そのため、2回のうち1回でも血液が検出された場合は、消化管に出血源があると考えて精密検査を受ける必要があります。
免責事項: 
本記事は疾患に関する一般的な情報提供を目的としています。記載内容には万全を期しておりますが、その正確性・最新性を保証するものではありません。本記事の情報は医学的アドバイスの提供ではなく、実際の診療行為に代わるものでもありません。症状や体調に不安がある方は、必ず専門の医療機関でご相談ください。