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過敏性腸症候群(IBS)の症状と原因 
下痢・便秘・腹痛の治し方と日常生活の注意点を解説 公開日:2024-12-23 / 更新日:2025-10-01

突然の腹痛や下痢、あるいは頑固な便秘とお腹の張り。検査をしても特に異常がないのに、このようなお腹の不調が繰り返し起こる場合、それは「過敏性腸症候群(IBS)」かもしれません。この疾患は、英語ではIrritable Bowel Syndromeと呼ばれ、IBSと略されることもあります。日本消化器病学会の報告によると、日本人の約10~20%がこの症状に悩んでいるとされ、決して珍しい病気ではありません。この記事では、過敏性腸症候群の基本的な知識から、症状のチェックリスト、原因、そして病院での検査や治療法、ご自身でできるセルフケアまで、信頼できる情報に基づいて分かりやすく解説します。

過敏性腸症候群(IBS)とは?定義とメカニズム

過敏性腸症候群(IBS)とは、大腸カメラなどの検査ではがんや潰瘍といった目に見える異常(器質的疾患)が見つからないにもかかわらず、腹痛やお腹の不快感が続き、それに関連して下痢や便秘などの便通異常が起こる疾患です。

私たちの腸は、脳と自律神経などを介して密接に連携しており、この関係は「脳腸相関」と呼ばれています。ストレスや不安を感じると脳が刺激され、その信号が腸に伝わって腸の動き(蠕動運動)が過剰になったり、逆に動きが鈍くなったりします。また、腸が刺激に対して非常に敏感になる「知覚過敏」という状態も、症状を引き起こす一因と考えられています。これらの要因が複雑に絡み合い、過敏性腸症候群の症状が現れるとされています。

過敏性腸症候群(IBS)の主な症状チェックリスト

ご自身の症状が過敏性腸症候群(IBS)にあてはまるか、チェックしてみましょう。以下のような症状が数ヶ月以上続いている場合は、注意が必要です。

  • 腹痛やお腹の不快感が繰り返し起こる
  • 痛みは排便によって一時的に楽になることが多い
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 急に強い便意を感じ、トイレに駆け込むことがある(特に電車の中や会議中など)
  • お腹がゴロゴロと鳴る
  • お腹にガスが溜まりやすく、おならが頻繁に出る、またはお腹が張って苦しい
  • 便がすっきりと出きらない感じがする(残便感)
  • ストレスを感じると症状が悪化する
  • 吐き気を感じることもある

これらの症状は、主に便の状態によって「下痢型」「便秘型」「混合型(下痢と便秘を繰り返す)」「分類不能型」の4つのタイプに分けられます。特に注意すべきサインは、急な体重減少、血便、夜中に腹痛で目が覚める、50歳以上で初めて症状が出た、などです。これらは他の重大な病気の可能性も考えられるため、早めに医療機関を受診することが推奨されます。

過敏性腸症候群(IBS)の原因とリスク要因

過敏性腸症候群(IBS)のはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。

ストレス

仕事や人間関係などの精神的なストレスは、症状を引き起こしたり悪化させたりする最大の要因の一つとされています。

自律神経の乱れ

不規則な生活や睡眠不足などによる自律神経の乱れが、腸の正常な働きを妨げることがあります。

脳腸相関の異常

前述の通り、脳と腸の連携に問題が生じ、腸が過敏になることが関係しています。

感染性腸炎の後遺症

細菌やウイルスによる腸炎にかかった後、腸内環境が変化し、IBSを発症することがあります。

腸内細菌の変化

腸内にいる細菌のバランス(腸内フローラ)の乱れが、症状に関わっている可能性が指摘されています。

食生活

特定の食品や不規則な食事が、症状の引き金になることがあります。

ホルモンバランス

特に女性の場合、月経周期に伴うホルモンバランスの変化が症状に影響することがあります。

▼日本における過敏性腸症候群の有病率の割合(%)

出典:過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS) – 全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/20170911kabinseityoushoukougun.pdf

日本のデータでは、人口の10~20%が過敏性腸症候群の症状を持っていると推定されており、消化器症状で医療機関を受診する患者さんの約3割を占めるという報告もあります。

過敏性腸症候群(IBS)の検査と診断基準
何科を受診すべきか

お腹の不調が続く場合、まずは消化器内科やかかりつけの内科を受診しましょう。ストレスが大きく関わっていると感じる場合は、心療内科が相談先になることもあります。

病院では、まず詳しい問診が行われます。どのような症状が、いつから、どんな時に起こりやすいかなどを医師に伝えることが重要です。

過敏性腸症候群の診断は、似たような症状を引き起こす他の病気(大腸がん、炎症性腸疾患など)の可能性がないことを確認する「除外診断」が基本となります。そのために、必要に応じて血液検査、便検査、腹部超音波検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)などが行われます。

これらの検査で異常が見つからず、国際的な診断基準である「ローマⅣ基準」などに照らし合わせて症状が合致する場合に、過敏性腸症候群と診断されます。

過敏性腸症候群(IBS)の治療法:
薬物療法とその他の選択肢

過敏性腸症候群の治療は、一つの方法で完治を目指すというより、症状をコントロールし、生活の質(QOL)を改善することを目標とします。日本消化器病学会の診療ガイドライン(2020年)でも、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善を基本とし、必要に応じて薬物療法や心理療法を組み合わせることが推奨されています。

薬物療法

症状の種類や強さに応じて、様々な薬が使われます。

腸の動きを調整する薬

腸の過剰な運動を抑えたり、逆に動きを活発にしたりします。ポリカルボフィルカルシウムなどが代表的です。

下痢を抑える薬

下痢型の症状が強い場合に用いられます。セロトニンという物質の働きを調整する薬(ラモセトロン塩酸塩など)があります。

便秘を改善する薬

便を柔らかくしたり、腸の分泌を促したりして排便を助けます(エロビキシバット水和物、リナクロチドなど)。

漢方薬

個々の体質や症状に合わせて、様々な漢方薬が用いられることがあります。

これらの薬は医師の処方が必要です。市販薬で一時的に対処することもできますが、症状が続く場合は自己判断せず、専門医に相談することが大切です。

手術・その他の治療

過敏性腸症候群に対して外科的な手術が行われることはありません。薬物療法で効果が不十分な場合や、ストレスや不安が非常に強い場合には、認知行動療法などの心理療法が有効な場合もあります。

▼全世界の機能性消化管疾患におけるIBSの割合

出典:日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS) (改訂第 2 版), 序文
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/IBSGL2020_.pdf

国際的な調査では、何らかの機能性消化管疾患の症状を持つ人のうち、過敏性腸症候群(IBS)の基準を満たす人は4.1%と報告されており、世界中で多くの人が悩む疾患であることがわかります。

日常生活での注意点と予防・セルフケア

過敏性腸症候群の症状を和らげるためには、日々の生活習慣の見直しが非常に重要です。

生活習慣の改善

十分な睡眠をとり、毎日決まった時間に食事をとるなど、規則正しい生活を心がけましょう。

ストレスマネジメント

自分に合ったリラックス法(趣味の時間、軽い運動、深呼吸など)を見つけ、ストレスを上手に発散させることが大切です。

適度な運動

ウォーキングなどの適度な運動は、腸の働きを整え、ストレス解消にもつながります。

食事改善

食事の内容を見直すことも有効です。暴飲暴食を避け、バランスの取れた食事を心がけましょう。特に、近年注目されているのが「低FODMAP(フォドマップ)食」です。これは、腸で発酵しやすい特定の糖質(FODMAP)を多く含む食品を一時的に避ける食事療法で、専門家の指導のもとで行うことが推奨されます。ヨーグルトなどに含まれるプロバイオティクスも、腸内環境の改善に役立つと考えられています。十分な水分補給も忘れないようにしましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 過敏性腸症候群は完治しますか?

A1. 症状が完全になくなる「完治」という状態になる方もいますが、多くの場合、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、長期的に付き合っていく疾患と考えられています。しかし、適切な治療やセルフケアによって、症状をコントロールし、日常生活に支障がないレベルまで改善することは十分に可能です。

Q2. 食事で特に気をつけることは何ですか?

A2. まずは、高脂肪食、アルコール、香辛料などの刺激物、多量のカフェインを避けることが一般的に推奨されます。それでも症状が改善しない場合、専門医や管理栄養士に相談の上で「低FODMAP食」を試してみる価値があります。ただし、自己流での極端な食事制限は栄養バランスを崩す可能性があるため注意が必要です。

Q3. 市販薬を使い続けても良いですか?

A3. 市販薬は一時的な症状緩和には役立ちますが、根本的な解決にはなりません。また、過敏性腸症候群に似た症状の他の病気が隠れている可能性もあります。症状が長期間続く場合は、一度医療機関を受診し、正確な診断を受けることが重要です。

Q4. 周りの人に症状を理解してもらえず辛いです。

A4. 過敏性腸症候群は外見からは分かりにくいため、周囲の理解を得にくいという側面があります。信頼できる家族や友人に具体的な症状や「トイレに行けない状況が不安」といった気持ちを話してみることも一つの方法です。また、同じ病気を持つ人々の患者会などで情報を共有することも、精神的な支えになる場合があります。

まとめと次のステップ

この記事では、過敏性腸症候群(IBS)について解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。

  • 過敏性腸症候群は、検査で異常がないのに腹痛や便通異常が続く、ありふれた疾患です。
  • 主な原因は、ストレスや生活習慣の乱れなどによる「脳腸相関」の異常と考えられています。
  • 治療の基本は、食事、運動、睡眠といった生活習慣の改善とストレスマネジメントです。
  • 症状に応じて薬物療法も有効であり、症状をコントロールして快適な生活を送ることは可能です。

お腹の不調は、生活の質を大きく低下させます。「いつ来るかわからない痛みが怖い」「またかという絶望感」など、一人で悩みを抱え込まず、まずは消化器内科などの専門医に相談してください。正しい知識を身につけ、適切な対策を行うことが、症状改善への第一歩です。

免責事項:
本記事は疾患に関する一般的な情報提供を目的としています。記載内容には万全を期しておりますが、その正確性・最新性を保証するものではありません。本記事の情報は医学的アドバイスの提供ではなく、実際の診療行為に代わるものでもありません。症状や体調に不安がある方は、必ず専門の医療機関でご相談ください。

文責:東大阪病院 副院長 前島 健志
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