
こうけつあつ
高血圧の症状と原因
知っておきたい診断、治療、そして予防
ページ更新日:2025.9.1
高血圧は、日本の成人の約3人に1人が該当すると言われるほど身近な生活習慣病です 。多くの場合、自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気の引き金となることから、「サイレント・キラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれています 。健康診断で血圧が高いと指摘されたものの、症状がないために放置してしまっている方も少なくありません 。
この記事では、日本高血圧学会の診療ガイドラインに基づき、高血圧の定義、原因、治療法、そして日常生活でできるセルフケアについて分かりやすく解説します 。
高血圧とは?定義とメカニズム
高血圧とは、安静時の血圧が慢性的に正常値よりも高い状態を指します 。血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです 。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、医療機関での診察室血圧が収縮期血圧(最高血圧)で140 mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)で90 mmHg以上の場合に高血圧と診断されます 。
血圧が高い状態が続くと、血管に強い圧力がかかり、血管の壁が傷ついて硬く、もろくなる「動脈硬化」が進行します 。この動脈硬化が、将来の脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などの重篤な合併症の主な原因となります 。
高血圧の原因とリスク要因
高血圧は、原因が特定できない「本態性高血圧」と、他の病気が原因で起こる「二次性高血圧」の2つに分けられます 。日本人の高血圧の約9割は、複数の要因が絡み合って起こる本態性高血圧と考えられています 。
主なリスク要因は以下の通りです 。
- 遺伝的要因:
親や血縁者に高血圧の方がいる場合 。 - 生活習慣:
- 塩分の過剰摂取:
体内の水分量を増やし、血圧を上昇させます 。 - 肥満:
体重が増えると、心臓がより多くの血液を送り出す必要があり、血圧が上がります 。 - 運動不足:
血行を悪化させ、血圧上昇を招きます 。 - 過度の飲酒・喫煙:
アルコールやタバコは血圧を上げる作用があります 。 - ストレス:
交感神経を活性化させ、血圧上昇の要因となり得ます 。
- 塩分の過剰摂取:
高血圧の検査と診断基準
何科を受診すべきか
健康診断で血圧の高さを指摘されたり、家庭での血圧測定で高い値が出た場合は、まずはお近くの内科または循環器内科を受診してください 。
診断には、一度の測定だけでなく、日を変えて繰り返し血圧を測定することが重要です 。近年では、ご自宅で測定する「家庭血圧」が重視されており、毎朝の血圧測定を習慣にすることが推奨されています 。
高血圧と診断された場合、合併症の有無や二次性高血圧の可能性を調べるために、以下のような検査が行われることがあります 。
- 血液検査:
腎機能や脂質、血糖値などを調べます 。 - 尿検査:
腎臓の障害がないかを確認します 。 - 心電図検査:
心臓への負担や不整脈の有無などを調べます 。
高血圧の治療法:薬物療法とその他の選択肢
高血圧治療の目的は、血圧を適切な範囲にコントロールし、将来起こりうる合併症を防ぐことです 。治療は「生活習慣の改善」と「薬物療法」の二本柱が基本となります 。
生活習慣の改善
薬物療法を行っている場合でも、生活習慣の改善を並行して行うことで、薬の効果を高めたり、量を減らしたりできる可能性があります 。
- 減塩:
1日の食塩摂取量を6g未満にすることが推奨されています 。 - 適正体重の維持:
肥満の方は減量することで血圧の低下が期待できます 。 - 運動療法:
ウォーキングなどの有酸素運動を、1日30分以上、毎日行うことが推奨されます 。 - 節酒・禁煙:
アルコールは適量を守り、禁煙は必須です 。
薬物療法
生活習慣を改善しても血圧が目標値まで下がらない場合や、すでに合併症がある場合には、降圧薬による治療が開始されます 。患者さんの状態に合わせて最適な薬が選択されます 。
主な降圧薬には、血管を広げる「カルシウム拮抗薬」 、血圧を上げるホルモンの働きを抑える「ARB」 や「ACE阻害薬」 、体内の余分な水分を排出する「利尿薬」 などがあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 薬を飲み始めたら、一生やめられないのですか?
A1. 生活習慣の改善によって血圧が安定し、医師が安全と判断した場合には、薬を減らしたり、やめたりできる可能性はあります 。しかし、自己判断で服薬を中断するのは非常に危険です 。必ず医師と相談しながら治療を進めてください 。
Q2. 自覚症状がないのに、なぜ薬を飲まないといけないのですか?
A2. 高血圧が「サイレント・キラー」と呼ばれるゆえんです 。症状がなくても、高い血圧は血管にダメージを与え続け、動脈硬化を進行させています 。将来の命に関わる病気を予防するために、症状がなくても血圧をコントロールすることが非常に重要なのです 。
まとめ
高血圧は、早期に発見し、適切に管理すれば、合併症のリスクを大幅に減らすことができる病気です 。健康診断などで血圧が高いと指摘されたら、症状がなくても放置せず、当院へご相談ください 。ご自身の血圧に関心を持ち、医師と共に治療を進めていくことが、健康な未来を守るための第一歩です。
免責事項:
本記事は疾患に関する一般的な情報提供を目的としています。記載内容には万全を期しておりますが、その正確性・最新性を保証するものではありません。本記事の情報は医学的アドバイスの提供ではなく、実際の診療行為に代わるものでもありません。症状や体調に不安がある方は、必ず専門の医療機関でご相談ください。