
にょうかんけっせき
尿管結石の症状と原因
激痛への対処法と治療、再発予防まで解説
ページ更新日:2025.8.31
突然、腰や背中に七転八倒するほどの激しい痛みが走る「尿管結失」。血尿や吐き気を伴うこともあり、経験した人からは「三大激痛の一つ」とも言われるつらい病気です。尿管結石は、腎臓でできた石(結石)が尿の通り道である尿管に詰まることで発症します。この病気は尿路結石症の一種で、英語ではUreteral stoneと呼ばれます。
日本の統計によると、生涯のうちに男性の7人に1人、女性の15人に1人が経験するとされ、決して珍しい病気ではありません。特に働き盛りの40〜60代の男性に多く見られます。食生活の変化とともに患者数は増えており、治療しても5年間で約45%の人が再発するとも言われています。
この記事では、尿管結石の症状や原因、そしてどのような治療が行われるのか、さらに再発を防ぐための日常生活での注意点まで、医学的な情報に基づいて分かりやすく解説します。
尿管結石とは?定義とメカニズム
尿管結石とは、腎臓の中で作られた結石が、尿を腎臓から膀胱へ運ぶ管である「尿管」に移動し、詰まってしまう状態を指します。
私たちの尿には、カルシウムやシュウ酸、尿酸といった様々な成分が含まれています。通常、これらの成分は尿に溶けていますが、何らかの原因で濃度が高くなったり、尿の量が減ったりすると、溶けきれずに結晶化して固まり、石(結石)となります。
この結石が腎臓内にあるうちは無症状であることが多いですが、尿の流れに乗って狭い尿管へ移動すると、尿の流れをせき止めてしまいます。これにより尿管がけいれんしたり、尿がたまって腎臓が腫れる「水腎症(すいじんしょう)」という状態になったりすることで、激しい痛みが引き起こされるのです。
尿管結石の主な症状チェックリスト
尿管結石の症状は、結石の大きさや詰まっている場所によって異なります。以下のような症状に心当たりがないか確認してみましょう。
- 突然始まる、片側の腰や脇腹、背中の激しい痛み(痛みの波が周期的に来ることがある)
- 痛みが下腹部や足の付け根に移動する
- 肉眼でもわかる血尿(尿が赤色や茶色になる)
- 残尿感や頻尿
- 吐き気や嘔吐
- 冷や汗が出る
特に「突然の激痛」は尿管結石の最も典型的な症状です。痛みのあまり救急車を呼ぶ人も少なくありません。こうした症状は前兆なく現れることがほとんどです。背中の痛みであっても、筋肉痛などとは異なる内側からの激しい痛みを感じた場合は、尿管結失を疑う必要があります。
尿管結石の原因とリスク要因
尿管結石の主な原因は、尿中の成分バランスが崩れることです。その背景には、以下のような様々な要因が関わっていると考えられています。
- 食生活:
動物性たんぱく質や脂質の多い食事、塩分の過剰摂取は、結石の成分であるシュウ酸や尿酸を尿中に増やす原因となります。特に、ほうれん草やたけのこ、チョコレートなどに多く含まれる「シュウ酸」の摂りすぎは注意が必要です。 - 水分不足:
水分摂取量が少ないと尿が濃くなり、結石ができやすくなります。汗を多くかく夏場は特に注意が必要です。 - 生活習慣病:
肥満、高血圧、糖尿病、高尿酸血症(痛風の原因)といった生活習慣病は、結石のリスクを高めることが知られています。 - 年齢と性別:
男性の方が女性より2倍以上かかりやすいとされています。 - 遺伝:
家族に結石になった人がいる場合、体質的に結石ができやすい可能性があります。
ストレスが直接の原因となるという医学的な証明はありませんが、ストレスによる暴飲食や水分不足が、間接的に結石のリスクを高める可能性は考えられます。
尿管結石の検査と診断基準
何科を受診すべきか
尿管結石が疑われる症状がある場合、まずは「泌尿器科」を受診することが推奨されます。夜間や休日で激しい痛みに襲われた場合は、救急外来を受診しましょう。
診断は、主に以下の検査を組み合わせて行われます。
- 尿検査:
血尿の有無や、尿路感染症の合併がないかなどを調べます。 - 画像検査:
結石の場所、大きさ、数、そして腎臓の腫れ(水腎症)の程度などを確認するために非常に重要です。 - CT検査:
放射線を用いて体の断面を撮影する検査です。
小さな結石やレントゲンでは写りにくい結石も鮮明に捉えることができ、診断において最も有用な検査とされています。 - 超音波(エコー)検査:
放射線被ばくがなく、腎臓の腫れ(水腎症)の確認に役立ちます。
これらの検査結果と症状を総合的に評価し、「尿路結石症診療ガイドライン」などを参考にしながら診断が確定されます。
尿管結石の治療法:薬物療法とその他の選択肢
尿管結石の治療法は、結石の大きさや場所、痛みの程度、感染症の有無などを考慮して決定されます。
薬物療法
結石が比較的小さく(おおむね10mm未満)、痛みがコントロールでき、感染症がない場合は、水分を多く摂りながら自然に結石が排出されるのを待つ「待機療法」が基本となります。その際、以下のような薬が補助的に用いられます。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):
ロキソプロフェンなど、痛みを和らげるために使用されます。 - 排石促進薬:
尿管の緊張を緩めて結石を通りやすくする目的で、α遮断薬などが処方されることがあります。
市販の痛み止めもありますが、自己判断での使用は診断を遅らせる危険があるため、必ず医療機関を受診してください。また、結石の種類によっては、結石を溶かすことを目的とした薬(クエン酸製剤など)が使われることもあります。
手術・その他の治療
自然排出が期待できない大きな結石や、痛みが激しい場合、腎臓の機能が悪化する恐れがある場合などには、結石を砕いて取り除く積極的な治療が行われます。主な治療法には以下の二つがあります。
- 体外衝撃波砕石術(ESWL):
体の外から衝撃波を結石に当てて細かく砕き、尿と一緒に自然に排出させる治療法です。日帰りや短期入院で行えることが多いですが、結石の場所や硬さによっては効果が出にくい場合があります。 - 経尿道的尿管砕石術(TUL):
尿道から細い内視鏡を挿入し、レーザーなどで直接結石を見ながら砕いて取り出す手術です。ESWLに比べて結石を取り除ける確率が高いとされています。手術後は、尿管の腫れを防ぐために一時的に「尿管ステント」という管を留置することがあります。
どちらの治療法が適しているかは、患者さんの状態によって異なりますので、担当医とよく相談することが重要です。
日常生活での注意点と予防・セルフケア
尿管結石は再発率が非常に高い病気であるため、治療後の予防が極めて重要です。日常生活では以下の点に気をつけましょう。
- 水分を十分に摂る:
食事以外に1日2リットル以上の水分(水やお茶)を摂ることが推奨されます。尿量を増やし、結石の原因となる物質の濃度を薄めることが目的です。 - 食事のバランスを見直す:
- シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、たけのこ、ナッツ類、紅茶、チョコレートなど)の摂りすぎに注意する。カルシウムと一緒に摂ると、シュウ酸が腸で吸収されにくくなります。
- 動物性たんぱく質や塩分を控える。
- クエン酸(レモン、みかんなどの柑橘類や梅干しに含まれる)は、結石の形成を抑える働きがあるため、積極的に摂ると良いでしょう。
- 適度な運動:
軽度の運動は結石の排出を助け、生活習慣病の予防にもつながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. この激しい痛みはいつまで続きますか?
A1. 痛みが続く期間は、結石が尿管から排出されるまで、あるいは治療によって痛みの原因が取り除かれるまでです。期間は結石の大きさや場所によって個人差が大きく、数日から数週間に及ぶこともあります。痛み止めなどで症状をコントロールしながら、医師の指示に従ってください。
Q2. 薬で結石を溶かすことはできますか?
A2. 結石の種類が「尿酸結石」や「シスチン結石」である場合、尿をアルカリ化する薬(クエン酸製剤など)で溶解が期待できることがあります。しかし、最も多い「シュウ酸カルシウム結石」を直接溶かす薬は現在のところありません。多くの場合は、痛みを和らげたり、尿管を広げたりして自然排出を助けるための薬物療法が行われます。
Q3. ESWLとTUL、どちらの治療法が良いですか?
A3.どちらの治療法が適しているかは、結石の大きさ、位置、硬さ、医療機関の設備、そして患者さんの希望などを総合的に判断して決定されます。例えば、比較的小さく硬くない結石にはESWL、硬い結石や大きな結石にはTULが選択される傾向があります。それぞれのメリット・デメリットについて担当医から十分な説明を受け、相談して決めましょう。
Q4. 一度かかると、また再発しますか?
A4.はい、再発しやすい病気です。「尿路結石症診療ガイドライン(2023年)」によると、5年間で約45%の人が再発すると報告されています。そのため、治療が終わった後も、水分摂取や食生活の改善といった予防策を継続することが非常に重要です。
まとめと次のステップ
尿管結石について解説しました。最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 尿管結石は、腎臓で作られた石が尿管に詰まることで、突然の激痛や血尿を引き起こす病気です。
- 原因は水分不足や食生活の乱れ、生活習慣病などが複雑に関係しています。
- 治療は、結石の大きさによって自然排出を待つか、衝撃波や内視鏡で砕く手術を行うかを判断します。
- 再発率が非常に高いため、水分を多く摂り、バランスの良い食事を心がけるなど、日頃の予防が何よりも大切です。
もし、これまでに経験したことのないような腰や背中の痛み、血尿などの症状が現れた場合は、ためらわずに救急外来を受診してください。早期に適切な診断と治療を受けることが、つらい症状から早く解放されるための第一歩です。
免責事項:
本記事は疾患に関する一般的な情報提供を目的としています。記載内容には万全を期しておりますが、その正確性・最新性を保証するものではありません。本記事の情報は医学的アドバイスの提供ではなく、実際の診療行為に代わるものでもありません。症状や体調に不安がある方は、必ず専門の医療機関でご相談ください。